兪栄根政協委員 西部大開発では生態系整備と環境保護
             の基礎的地位を確立しなければならない


 西部大開発政策の実施は、中国共産党中央が新しい世紀に打ち出した重要な戦略的方策である。西部地区の持続可能な発展の全般的能力が低いという現実の下で、いかにして人口、資源、環境を経済社会とバランスのとれた形で発展させるかは、西部大開発政策実施が直面している重要課題となっている。

一、西部地区の生態状況

中国の西部地区の生態環境の条件は非常に軟弱である。これは中国が西部大開発を実施するにあたって直面している最大の挑戦である。西北地区は内陸部に位置し、海から遠く離れ、南西地区は山の地勢が険しく、渓谷が縦横に走り、地質的条件が不安定で、さらに数千年来農業・牧畜業の過度の開発が加わり、生態環境の悪化が非常に深刻化している。

@水土の流失と土壌の砂漠化問題が深刻である。中国の水土流失の面積は178万平方`に達し、国土面積の約5分の1を占め、そのうち、西南と西北地区が最も深刻で、それぞれ全国の24.85%と22.39%を占めている。中国の土壌の砂漠化面積は約262万平方`あり、「三化」牧草地帯は135万平方`で、そのほとんどが西部地区で分布している。中国の干ばつ地域あるいは半干ばつ地域の40%の耕地は今なお程度の差こそあれ退化しつつある。

A自然災害が頻繁に発生している。西部地区は鉄砲水、地滑り、山津波、干ばつ、砂あらしなどの自然災害の多発地域で、経済発展と社会の安定にマイナスの影響を及ぼしている。

B生物の種類が減ってきた。土地の負荷が大きすぎるため、生態に対する破壊が深刻になり、生物資源は絶えず減少し、数多くの稀少動植物は絶滅に瀕している。

C水資源が非常に不足しているため、水の生態バランスがとれなくなっている。西北地区は水資源が非常に不足しており、ここ数年来、河川の水が枯れ、湖が枯渇した。

西部の省・自治区は工業生産の技術が立ち遅れているため、その1万元あたりの生産高の廃棄物排出量は全国の平均水準よりはるかに高い。汚染対策に力を入れなければ、水資源の汚染がさらに深刻なものとなるだろう。

西部地区の弱い生態環境と限りのある環境の容量は、西部地区の社会経済の発展を大いに制約している。多くの貧困人口はこれらの地域に暮らしており、彼らは生存のため、低いレベルでの過度の開発を急いでいる。「貧困――過度の開発――生態環境の退化」の悪循環が形成されている。

二、西部開発における環境のプレッシャー

西部地区の経済と環境の現状を総合的に見れば、西部が大いに開発をすすめる中で、大きな環境によるリスクとプレッシャーに真っ先に直面すると推測することができる。

@経済総量の増加は加工工業によるひどい汚染の排出量の増加とともにすすんでいる。西部地区は基本的に工業化の初歩的な段階に置かれ、資源型経済構造は顕著な形で現れている。

大多数の省・自治区は第2次産業を支柱産業の一つとし、エネルギー資源の鉱産工業のほか、化学工業、自動車、建築材料などの業種がある。これらはすべて「三廃」排出量の大きい産業である。

A区域経済の階段的発展の法則と市場の需要供給法則によって決定づけられた汚染の移転は西部地区が直面している新たな挑戦である。中国環境科学研究院のデータによると、ここ数年来、工業生産額は「東へシフトした」が、工業による汚染は「西へシフトしている」。1986年から1995年までの10年間、工業生産額は東へ5ポイント「シフトし」、CDOの排出量は12ポイント「移した」。東部産業のグレードアップ、西部労働力の低いコスト、資源、エネルギーが豊富で、低い技術力によって東部からの投資を誘致し、西部地区で資源の一次産品の業種の出現と発展をもたらしやすくなり、新たな汚染源を形成することになる。

三、西部大開発における生態系整備強化についての提案

1、 西部開発においては生態系の整備と環境保護の基礎的地位を確立しなければならない

国は環境戦略が西部大開発戦略の一構成部分であることを終始強調すべきで、それによって大保護を土台とする大開発という意識を確立し、生態系整備と環境保護を西部大開発の基礎的地位に置くことである。環境と経済の一体化という意識によって、かなり全面的で、長期的な西部生態回復と建設の計画を制定すべきで、西部大開発の前段階あるいは同期の計画(事後の救済措置ではない)として実施する。

2、西部地区の生態環境の現状調査を着実に行う

西部地区の生態環境の現状に対する調査をさらに着実におこない、事こまかに調べ、西部開発の総合的政策制定のための拠り所とする。生態調査を踏まえ、生態計画の制定を通じて、区域、地域の生態保護の目標、原則、重点、対策措置を明確にし、グレード別に重要な生態機能保護区を建設し、緊急保護措置をとる。

3、西部生態環境保護の飛躍的発展の実現に努める

西部開発は経済成長の質と生活環境の質を高めることを核とし、経済成長パターンの転換を促し、粗放型の経済成長のやり方、環境を犠牲にすることを代償とする発展段階を乗り越えて、「高成長、高い資源消耗」、「大いに開発し、大いに(生態系)を破壊する」という古いやり方をやめる。そのため、科学技術の進歩と後発の発展という強みを生かし、高い技術水準を備えた、技術的に先進的な産業を開発する。生態農業と生態産業の発展を促し、農業経済の構造を最適化する。都市のインフラ建設と小都市・町発展における環境保護を強化して、配置が乱れた、無秩序の開発を防止する。生態保護に力を入れ、砂漠化対策、治水、土地整備を貧困からの脱却および発展と結びつける。

4、全国が西部環境戦略に参与し、サポートする枠組みを構築する

西部大開発の環境戦略は西部の資源と環境を保護するためであるばかりか、東部地区のための生態保護の障壁をつくり、国全体の経済と社会の持続可能な発展のために後続力、しっかりした基盤を築き上げる。そのため全国各地からの共同の参与を必要とする。現在、西部地区の環境管理能力は軟弱である。発達している地区がサポートする必要がある。西部地区のエネルギー構造の調整を優先的に行うべきで、地区間の利益のバランスのとれた構造と補償システムを構築できである。

5、環境保護面の法律のPRと法律執行の度合いを高める

中国はすでに環境保護法律を6つ、自然資源管理の法律を9つ、環境保護と資源管理行政法規30余り、持続可能な発展とかかわりのあるその他の法律と行政法規30余り、地方環境保護、資源管理法規600余項目、国家環境基準395項目を制定した。これらの法律・法規によっては中国の政治、経済、社会の発展状況に基本的に適応した環境と資源保護の法的システムの枠組みが形成された。西部開発において、法律・法規のPR、普及を強化し、法律執行と法律執行への監督に力を入れ、生態環境を保護する。

6、科学技術のイノベーションに頼って西部の生態環境の整備をりっぱにおしすすめる

ハイテクあるいは知識集約は、最少の資源で最高の価値を創りあげることを意味している。西部開発において、最良の実用技術の普及を通じて、科学技術成果の生産力への転化を速め、同時に西部に生態経済モデル区を建設し、経済、社会、環境のバランスのとれた発展のモデルを多く確立し、西部の生態環境の整備を促す。

「チャイナネット」2001年3月22日