呉建国政協委員 社会保障システムを確立し、完ぺき化する


改革開放の深化につれて「小さな政府、大きな社会」という新しい党と国家の運営メカニズムが形成されつつある。社会生活の面において政府部門が主宰する社会保障システムを確立し、完ぺきなものにすると同時に、社会公益的性格の民間団体に発展の空間を与えるのである。我が国の数多くの社会公益団体はこうした背景のもとで生まれ、発展をとげているのである。

中国赤十字協会、宋慶齢基金会、中国残疾人(身体障害者)協会、中国青少年基金会、中国扶貧(貧困者扶助)基金会、中国老齢者協会、中華慈善総会などはその具体的な例である。これらの民間団体は今や無視することのできない役割を果している。中華慈善総会を例とすると、1998年の旧正月に発生した,張家口北部の地震、夏と秋の境目の水害及び今年の冬の内蒙古、新疆の大雪による災害に対する緊急援助活動においてこの協会は7億元以上の物資や現金を募集した。統計によれば1998年における水害救援活動のために国の財政からは48億元が支出されたが社会団体の募金や物資の総額は72億元にも達した。この数字は社会公益団体、慈善団体の存在する意義を物語っており、社会各方面の掘り起こすことのできる潜在力を示めすものである。

全社会の力と資源によって、社会自体が調停、融和できるさまざまな矛盾を解決することで政府に緩衝の余地を残すことは国の事柄を処理するよい方法だと言えよう。この発想にもとづいて国の関係部門につぎのような提案をするものである。

一、「小さな政府、大きな会社」という全般構想に従って政府関係部門の主宰する保障メカニズムを完ぺき化し、全面的に中央の労働と社会保障に関する割りふりを実現すると同時に民間団体の社会公益事業の発展を促進して社会に潜在する物質的、精神的資源を掘り起こし大小さまざまな社会公益組織を重視して政府を主体とし、民間の公益団体を補完的なものとし、住民区を基礎とする社会保障システムを確立するのである。今やこのような社会保障を全面的に発展させる戦略を提出する時期が到来したのである。

二、社会の全面的な発展のトータルな戦略の要求にもとづく法律、法規と政策を制定し、民間の公益、慈善の設立をサポートすると同時にそれに対する管理を強めることによってその活動を規範化し、起こりうる弊害を防止するため審査認可、会計監査と監督、特に寄贈資格の認定と贈与税の控除権の委託を厳しくしなければならない。政治面で信頼できて本当に「政府の力になり、国民の困難を排除できる」、内外で名声があり、影響力のある公益団体を重点的に援助し、政策面で優遇を与えてその模範的役割を発揮させるとともに、公益、慈善の名を借りて私利をむさぼる団体や人間、あるいは政治的陰謀を画策する手段となることを防がなければならない。寄贈は崇高な行為であり、不合理な付加条件、特に政治上の付加条件をつけることは許されない。寄贈の物資や現金の受取りと分配は公益機構、慈善組織のイメージと命運にかかわる非常に敏感な事柄であるため、その運営はオープンにするべきで規律や法律を無視して悪事を働くものを厳しく処罰すべきである。

三、社会の全面的発展という全般的戦略から出発して段取りを調整し、すでに公布されてはいるが、しかし社会公益事業の発展をさらに促進することに適応しえない「寄贈法」、税法を改正し、最近国務院が制定した中国資本企業と外国資本企業および個人の救済を目的とする寄贈行為に対する政策、即ち中外企業及び個人の救済寄贈に対する免税優遇を与える政策を早急に「寄贈法」、税法に盛り込むことによって各界の人びとにこの法律の持つ社会的な意義を理解させ、社会に対する責任感を増強させるようにしなければならない。

四、江沢民総書記の「徳をもって国を治める」という方策と「人道主義は人間関係を処理する道徳規範のひとつである」という論述を全面的に把握して中華民族の貧困者を扶助する伝統的美徳を広め、黄帝の子孫としての切っても切れない間柄で、血はより濃い、「吾が老を老として、以て人の老に及ぼし、吾が幼を幼として、以て人の幼に及ぼさば、天下は掌に運らすべし(孟子・梁恵王章句より)」といったお互いに配慮しあい、愛情を込めて人に接することを提唱し、そうした行為を表彰する。市場經済の精神生活面におけるマイナスの影響を抑えて社会的結束力を増強する。1998年の洪水を防ぎ止め、被災者を救出する場面は今も頭に、はっきりしたイメージとして残っている。全国政協主席の李瑞環氏は「貧困者を扶助し、善行を好み、喜捨を好む」を特徴とする中華民族の伝統的美徳が「文明社会の重要なメルクマール」だけではなく「市場経済において道徳の力を用いらずに利益関係を調節する有效な形」でもあると見ている。党と政府の指導者たちの発言は私たちの活動の指導思想の一つとなるべきである。

五、社会公益、慈善事業の発展には資金力と物資資源の開発が必要であるばかりか人的資源の集中的使用も必要である。もっぱら社会公益事業に従事するボランティア奉仕者同士の結合を実現する――これは社会公益事業のサービス機能を十分に発揮するための重要な条件である。これは国外でよく採用されている方法だが、中国ではまだ安定したやりかたにはなっていない。これは人びとを組織した公益事業の基礎を固め、政府機構、学校、企業、住民にョって公益、慈善機構を中心にしてボランティア奉仕者に働きかけ、組織して定期的に、方向性をもってさまざまな社会公益活動に参加することによって国民の社会的責任感を高め、情操をはぐくみ、結束力を強めるのである。これは非常に有意義なことである。

「チャイナネット」2001/04/06